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 今作「SILENT HILL3」では「歌」(人の声)を挿入しようと以前から思ってて、今作では演出として、歌曲が挿入されることになります。
 ゲームに「歌」が挿入される事は、別段変わった事でもないし、新しい事でもないと思ってて、特筆する事などないと思ってるけど。

 ただ、自分はゲームにとって「歌」は、これもまた「効果」音の一つだと思ってるんですね。あくまでもゲームとしての価値や面白さを、更に広げるものだと。尚更「音楽」だって「効果」音だと。
 だから、そういった「効果的」なものでないとSILENT HILLでは扱いたくない。でないと、どこかのDTMが鳴ってるようなゲームになってしまうし(笑)。
 歌の発想は、そういったところから来てますね。
 別に、作曲家アーティストなわけでも、プレーヤーでもないしね(笑)、自分はゲームサウンドのデザイナーとして、ゲームを音で演出したいと思って歌の起用がベストだと感じたといったところ。

 歌曲には十分すぎる時間を割いたね。歌手の起用から、作曲、レコーディングまで。
 タイアップみたいに曲を渡されて、組み込んでお終いみたいな、楽なゲームづくりはしてないからSILENT HILLって。楽曲の制作、構成、使う楽器の全てまで、手綱を握っておかないと、全てのバランスが崩れるから。もちろん歌であれば、歌唱者とのコミュニケーションとコンセンサスは、「ゲームありき」なので、他の事より十分時間を割いて、SILENT HILLに浸かってもらいましたね。

 レコーディングは、アメリカ、ロサンゼルスで行い、素晴らしく象る事ができましたね。
 十分程満足のゆくものだった。
 ロスをレコーディング地に選んだのも、やっぱり「本当」を演りたかったというのもあるかな。
 「本当」っていうのは、作品性ときっちりコミュニケーションがとれたサウンドってことですね。「歌ものやりたいから、歌録る」みたいなのとはちがうから(笑)。
 あと、ゲームで「歌曲」を使うっていうのは、こういう事じゃないの?って、SILENT HILL3で示したかったというのもあるし。

 結果、歌はSILENT HILL3を200%体現してくれましたね。これは、ロサンゼルスのスタッフを含め、SILENT HILL3チームの力も大きかったね。また、自分はゲームとしてのサウンドを更に学ばされました。そして、良い意味でマイノリティなサウンドはSILENT HILL3で実現できたと感じてる。
 しかし、なによりもゲーム「SILENT HILL3」としての遊びや面白さを、とても大きく広げられたと感じてますね。

 そう、サウンド担当とかしてると、この辺にきて「どうぞ聴いてください」とか言うんだろうね(笑)。
 言えないよね、そんなさむざむしい事(笑)。
 そんな事より、ゲームを楽しんでほしい。
 「SILENT HILL3」は、SILENT HILLシリーズを遊んでくれた人にとっては「あの世界観」ね、さらに深く。
 はじめて、遊んでみたい人にとっては、他にない面白さや感覚が味わえると思えるし。
 別にシリーズやってなくても十分遊べる。マイノリティでメジャー感のあるゲームは他にないからね。
 「MASTER OF HORROR」ですから。

Akira Yamaoka

©1999 2003 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.