logo
サイレントヒル4
サイレントヒル4 制作者の声
サイレントヒル4 制作者の声 メニュー

「サイレントヒル」には今作から、デモムービー制作としての参加となりました。
以前は社内のオープニングムービーなどの仕事を中心にしていました。
ゲームに関してのお話は他の方がされると思いますので、今回は現場での個人的な苦労話をしたいと思います。

今回一番苦労した点――ほとんどの部分が苦労の連続だったのですが――は、やはりリアルタイムレンダリングでの映像制作でした。
通常のCG映像と何が違うのかと言いますと、簡単に言ってしまえば「絵に嘘がつけない」点です。プリレンダー(いわゆる普通の映像CG)であれば、編集の段階で階調補正、背景へのマッチング、影の有無やハイライトの処理・フォーカスetc.……ほとんどのコントロールができます。
自分の制作の場合、3Dツール上である程度調整し、最終的な絵作りは編集ツール上で行うのが常でした。

しかしながら今作のようにリアルタイムレンダリングでのデータは(ハード的な制約もありますが)、データを作ってからのごまかしはほとんど利きません。何年もプリレンダーの仕事をしてきた自分にとっては、これは想像以上に大きなハードルでした。ある程度、では駄目で完全に再生して絵の出るデータを作る必要があり、日々トライアンドエラーの繰り返しでした。
離れてみて始めて思うありがたみ……レンダリングが恋しい日々が続きました。
終わってみて苦労の多かった分、愛着はあります。特にシンシアのデモとか…。

オープニングトレーラはその反対に今まで自分がやってきた手法で作ったものです。ゲーム間デモとオープニングで味わいの違う仕上がりになっていると思います。
そういった違いも見比べながらみなさんに楽しんでいただけましたら幸いです。

その他、苦労した点は演出部分です。
プレイされた方はわかると思いますが、主人公ヘンリーはあまり喋りません。これは企画のコンセプトとして主人公はあくまでプレイヤーなので、見せる感情の表現などは極力避ける。と言うものがありました。
演出的にはかなり頭を悩まされましたが、その分独特の放置感が出たかな?と思っています。

もう一点苦労した点は修正作業です。
日々更新されるデザインのデータが全部集まってくる部分なのでこれは仕方の無いことだとは思います。最後の最後までデータの差し替え等に追われていました。
モーションキャプチャーの収録が終わって、一通りデモのデータが完成し、さぁこれから作りこむかと意気込んでいるときにメインキャラクターの大幅な修正が入りました。外見的な修正はもとより、アニメーションのベースとなる構造にまで変更箇所が入る修正でした。
このときはさすがに本当に涙が出てきそうな思いでした。データをくみ上げてから、ほとんど全編のモーションを修正することになりました。
デモ制作に参加してくれた二人にその話をする瞬間が今考えると一番辛い瞬間でした。言わないと始まらないので覚悟を決めて二人に伝えました。その二人の唖然とした表情が制作を離れた今でも浮かびます。
その後一言「……良くなるなら…」「………やりますか…。」……と言ってくれた瞬間、僕の心は救われました。
その二人がいなければ終われない修正だったかもしれません。なにせ二時間以上のモーションデータでしたから…。
今その二人は別の仕事をしています。ゲームも無事発売できました。
本当にありがとう。


最後に今回いろんな意味でよい経験が出来たと思います。
また何かの作品を通して皆様にお会いできればと思っております。



---- デモムービー担当 辻本厚至 ----


サイレントヒル4  トップページへ戻る